だいぶ間が空いてしまいましたが〜( ´Д`)
進化ネタの続きであります。
前々回、古代の進化論ということで
アニミズムやトーテミズムといった神話的世界と
科学的な進化論の親和性について紹介しました。
そして最後に、逆説的な進化の話題で
進化の反転性について触れて終わりました。
今回は、進化の中に隠された
反転性と延長的な進化について書きます。
● 負け組進化論
アニマンダラには種我同型論と並ぶ代表的な考え方に
負け組進化と勝ち組進化というのがあります。
負け組、勝ち組というのはキャッチーな表現で
正式には、
垂直進化(負け組進化)と
水平進化(勝ち組進化)と言うんですけれどね。
負け組進化は、
人間を生み出す内骨格動物(脊椎動物)の進化に
特に顕著な進化のこと。
一方、勝ち組進化は、
主に外骨格動物の進化に顕著な進化のことです。
アニマンダラの系統樹ではこんな感じになります。
前回も書きましたが、
『適者生存』を唱えたハーバート・スペンサーなど
昔の科学者や社会学者は、人間は強者として
環境に適応し続けてきた生物の系統だと信じていました。
ところがその後の研究によって、
進化は必ずしも優秀なものが生き残ったり
合理的なほうが生き残るわけでもなく
生態的弱者が生き残り、強者が滅びることも
珍しくないことがわかってきました。
特に人間進化のプロセスは、それが顕著です。
現在科学者たちの間では、
適応とは強者であるかどうかではなく
結果として生き残れたかどうか。
単に進化は変化を意味し、
人間は特別優れていたわけでなく
運良く条件が揃っただけ。
という方向性のないものになっていきました。
でも科学者が偶然だと説明する
人間への進化の道筋に、ちょっとした視点を持つと
人間の負けて負けて進化した道筋は
偶然ではなく必然だと思えるパターンが浮かんできます。
それは、一見
自由にランダムに見える進化の系統樹に
陰陽対象性の視点を持ち込むことでした。
勝ち組進化は、合理的で効率的な進化です。
そのため、例えば『より強く、より大きく』など
何らかのわかりやすい利点の方向に進化します。
最適化していく適応的な進化のことです。
ダーウィニズムと親和性の高い進化です。
それに対して、負け組進化は
進化の分岐の段階では、これといった利点がない、
場合によってはその種にとっては不利に見えたり、
進化しても生態的弱者のまま。
だけれども長期的にみると大きな飛躍を生む進化です。
その種にとっては、生態的地位を上げるものではありません。
非最適化の進化です。
現在では、偶然運が良く生き延びたから
進化が継承された、と見られている進化に含まれてしまうものです。
この二つを、水平進化と垂直進化という
対象性の視点で捉えて、進化を整理すると
陰陽対象性で面白いパターンが浮かびうがります。
特に人間の進化を辿っていくと
人間になるまで、ことごとく、
垂直進化(負け組側)の進化ばかりなのがわかります。
人間の進化に極端に集中しているんです。
一度や二度や三度ならともかく
ひたすら垂直進化ばかり。
だとすると、これは流石に『偶然』というより
寧ろ、この垂直進化にこそ
人間を生み出した原動力があるのではないでしょうか?
●ナイーブで弱々しい先祖と垂直進化
原始的な動物が爆発的に一気に進化した
生命のビッグバンとも言われる、
カンブリア爆発という現象があります。
生命に目が開き、
食うか食われるかの捕食が活性化し
それが進化の淘汰圧となったのが原因で、
多様な生物に爆発的に進化した、とされる出来事です。
カンブリア時代、8割以上の動物が
食べられちゃかなわん!と、外骨格化。
外骨格動物というのは、海老や蟹みたいな、節足動物のこと。
また、ハサミ、爪、トゲ、顎などの
多様な武装も、一気に動物界に生まれました。
その当時の最強動物はアノマロカリス。
体も大きく、触手や独特の顎を持ちます。
それに対して私たちの先祖は!
ピカイアや、ハイコウエラと呼ばれる
ヒョロヒョロとしたナメクジのような魚の先祖。
体の構造を決めるHox遺伝子のエラー
により、内と外が裏返って、結果的に
外ではなく、内側に
硬くなる部分を作ってしまった
いわばドジっ娘だったというのです!
これ、比喩的な話ではなく
外骨格と内骨格の体の作りは、発生学的に
本当に靴下をベロンと裏返した関係になっています。
なんの武装も持たない貧弱な姿。
彼らは、海底の泥に隠れたりして、
怖い動物から逃げて逃げて生き残ったと考えられます。
むき出しで、ナイーブな敏感肌だったことで
危険を素早く察知でき、
それが生き残るのには幸いだったようです。
これが、私たちの人間の系統の初期の姿でした。
内と外が裏返ってしまい、ある意味ではトホホです。
しかし、そのエラーによって、身体の
『内と外』『前と後ろ』全てが反転して
神経が中央に集まりました。
結果的に、やがて私たちの人間に繋がる
中枢神経系と、小さな脳ができてもいたのです。
もっとも
まだあまりに貧弱で、特別賢いというわけでもなく
敏感で少しだけ反応が良かった、という程度のようです。
●負け組進化=反転する進化、勝ち組進化=延長する進化
人間の先祖は、なぜか進化の度に
ピカイアの時のように、その時点では
あまり有利な進化とはいえない進化や
遺伝子エラーを重ねていきます。
そして、ピカイアがそうであったように
私たちの先祖は、人間になるその時まで
どうやら、ずっと生態的弱者側だったようです。
チンパンジーと共通の先祖から
ヒトとチンパージーに別れる進化については
諸説ありますが、有力視されている草原説では
当時、減っていくジャングルから
草原へと追い出されたものが人の先祖となり
ジャングルに残った勝ち組がチンパンジーとなった、とされています。
レクチャーでは詳しくお話ししていますが
ピカイアとチンパンジーの間も
ずっとそんなことが繰り返されます。
ただ、もちろん!
この負け組進化、単に負けたわけじゃないんです。
負ける度に、草原に追いやられたり、陸地に追いやられたり
ある種の新天地へと追いやられているんですね。
進んで新天地に向かった個体もいた可能性もあります。
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負け組進化の特徴は沢山ありますが
最大の特徴の一つは、ピカイアの体が
遺伝子エラーで内と外をベロンと反転したように
外部を内部に取り込むような変化を繰り返します。
例えば、淡水系に追いやられた時は
外部である海水のミネラルを
内部の背骨に持つように進化しました。
それにより、
ミネラルの無い淡水で生きられるようになりました。
爬虫類は活動するために、太陽の熱エネルギーを必要としますが
鳥や哺乳類などの温血動物は、内部に熱源を持つようになります。
このような、内外反転を繰り返して
新たなシステムを生み出して進化するのが、垂直進化系です。
変化のプロセスでは、必ずしも有利に見えなかったり
愚かにすら見えかねない進化だったりもしますが
あとあと効いてくる、大きなイノベーションを生むのです。
偉大で真に新しい発明は、最初は
周囲に理解されなかったり呆れられるのに似ています。
あるいは、引きこもりのオタクが、ある日
自作アニメで作家になる、なんていうのも垂直進化的と言えます。
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それに対して、水平進化は
外部は外部、内部は内部のまま
外部という環境に最適化して進化していきます。
より大きくなったり、武器を鋭くしたり
今のシステムを改変、改造して
直接効率アップするような進化です。
現在のシステムの延長の進化なのです。
進化というよりは成長ですね。
延長的進化は、短期的には有利ですが
長期的には、固定化してしまい、
大きな構造変化を生み出せなくなっていきます。
一方、反転する垂直進化は
反転する度に、外界の影響力を下げて
自由度を増していく方向に進化していきます。
外部を内部に、あたかも未知を引き入れるような進化に見えます。
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そして人間は、最終的に
特殊な言葉を持つことによって
物理空間という外部を
全て丸ごと情報空間に取り込み
別次元の空間性を展開するに至った存在
と、考えるのがアニマンダラです。
文明や文化は、その表れです。
(そのことの功罪はありますが。それはまた別の機会に。)
人間は、動物としては
外部の物理的環境から極限まで自由になっています。
私たちはまた、
自我の中で進化を反復するという考えと
種我同型論から、一人一人自我発達のプロセスで
その両方の進化の方向性を持って
今でも生きている、と考えられます。
私たちは、誰も皆
単純な勝ち負けでは括れない
反転する進化が内在しています。
精神において、
もし人間の中の人間へと向かおうとするなら
今の延長に描けるような、直線的で最適化の方向ではなく
今を超えて、自覚できない未来を巻き込むような
無意識の未来に導かれる進化をする必要があるようです。
未来を巻き込む・・・つまりは
時間を今に縮めるような進化とも表現できます。
中今の概念ですね。
内骨格進化は、アニミズム・トーテミズムのような
時を潰した時間概念を感じさせる進化
と言っても良いでしょう。